Sublime Frequencies
12 products






各地の伝統音楽のフィールドレコーディングにおいて、50年代末から70年代という期間は、各地に伝統がまだ色濃く残っていたこと、外来種である西洋人と現地の方々との相互理解が進んだこと、ポータブルな録音環境の向上、三者全てが同時に成立していた、まさに黄金時代といえます。その時期に西アフリカ、インド、パプワニューギニア、ラオスと広範囲に渡ってCharles Duvelleが残した録音は、一編一編が、その地の人々の叡智のエッセンスが凝縮されているかのようにひっそりと真実の光を放つ宝石のようです。氏のアフリカはベナンでの録音は、地球外知的生命体や未来の人類が見つけて解読してくれることを期待し、1977年に打ち上げられた2機のボイジャー探査機にレコードとして載せられたようですが、それも納得の、完全な交信の音楽です。パプワニューギニアでの録音も海の静謐さを感じさせる神秘的な音楽で、Charles Duvelleという一人の録音家という視点で様々な録音をまとめることで、氏が後世に伝えたかったと思われる音楽の本当の姿がより立体的に立ち現れて来ることも非常に興味深い内容となっています。
ハードカバーの重厚な装丁による書籍には、録音家であるとともに写真家でもある彼の撮った写真が掲載されています。188点のモノクロ写真と、58点のカラー写真を含む296ページに及ぶ大ボリュームで、これはもはやブックレットというよりは写真集といったほうがいいかもしれません(Ocoraのアナログ盤のジャケットも掲載)。民族音楽が好きな方はもちろん、全ての音楽を愛する人に。



各地の骨董的な音楽を掘り起こしてきた名門レーベル〈Sublime Frequencies〉からは、Kink GongことLaurent Jeanneauが2011年に録音した、中国雲南省のハニ族のポリフォニー歌唱を収めた珠玉の1枚がアナログで登場。神秘的で別世界的な合唱の美しさが、はるか遠く外宇宙へ広がっていくような、卓越した伝統音楽アンサンブルによる、現代的な響きの、前衛的なボーカル・フュージョンと奇妙な楽器の伴奏を組み合わせた恐るべきパフォーマンスが満載。ハニ族は言語的にはチベット・ビルマ語族のイ語派に由来し、中国雲南省南部のラオスとベトナムの上流に150万人が暮らしています。この地域の他の多くの民族集団と同様に、独自の伝統的な歌唱パターンが用いられており、各歌手は文脈に合わせて歌詞を調整。物憂げでありながらも、力強く超越的な音楽のカスケードによる、これまでに聴いた事のないような、感情を揺さぶる珠玉の録音。


各地の骨董的な音楽を掘り起こしてきた名門レーベル〈Sublime Frequencies〉からは、インド国内外で生徒を指導している新世代の女性ルドラ・ヴィーナ奏者の1人であり、楽器製作者、コルカタ出身のMadhuvanti Palによるパフォーマンスを収録した、自身初となるLP作品『The Holy Mother (Plays The Rudra Veena)』がリリース。ルドラ ヴィーナという名前は、サンスクリット語の 2 つの語源に由来しており、ルドラはシヴァ神の名前であり、ヴィーナは「楽器」を意味します。ルドラ・ヴィーナは、今日でも演奏されている北インドの古典音楽の最古の形式、ドゥルパドでも人気の楽器であり、ムガル帝国時代には、北インド各地の宮廷でよく演奏され、ルドラ・ヴィーナ奏者を含むドゥルパド音楽家は、さまざまな王や王子の支援を受けていました。この楽器は、インド国外の音楽家からの関心もあって、人気が高まりつつあります。本作は、マドゥヴァンティのアパートにて録音が行われ、アルバムの準備では、彼女が自分の機材を使用して各ラーガを録音/ミックス/マスタリングしています。90分を超える長さの限定盤ダブルLP/フルカラーのゲートフォールド仕様。詳細なライナーノーツが付属。



ウード奏者であり作曲家でもあるAly Eissa、ベルギー/ノルウェー出身のキーボーディスト、Jonas Cambien、アレキサンドリア出身のヴァイオリニスト、Ayman AsfourからなるトリオであるThe Handoverの2023年1月にエジプトのアレクサンドリアで録音された作品『The Handover』が<SUBLIME FREQUENCIES>より登場!古典的なアラブ音楽の繊細さ、エジプトの儀式音楽の生々しい表現力、自由な即興演奏の自発性をエレガントに融合させせながら、70年代のサイケデリック・ロックのような雰囲気を醸し出すヴィンテージのファルフィサ・オルガンやウード、シンセサイザー、ヴァイオリンがクラウト・ロックと中近東からの影響も感じさせる反復するリフを演奏する、アラブ古典音楽、エジプト儀式音楽、サイケデリック、クラウトロック、フリー・インプロヴィゼーションの影響を受けつつも、それらを現代に昇華したとんでもない一枚!


〈Sublime Frequencies〉より、マダガスカル南西部トゥリアラ周辺で生まれたツァピキ音楽の現在地を描き出す屈指のコンピレーションが登場。70年代から進化し続けるマダガスカル南西部の祝祭音楽を、ぶっ壊れ気味のシンセ入りダンス仕様から、現場そのままのアコースティック・ジャムまで縦横無尽に並べている。歪んだエレキギター、弾丸のようなベース、止まることのない高速ビートに乗って、陶酔感に満ちたヴォーカルが叫ぶ。ツァピキは、葬式、結婚式、割礼といった通過儀礼の場で数日に(!)わたって演奏される音楽で、たばこや自家製のラム酒が回され、牛と人が入り混じる赤土の広場で、電化バンドが夜を徹して演奏し続ける。機材は手作り同然、つぎはぎのアンプや木に吊るしたホーンスピーカーを通じて、音楽は何キロも先まで響き渡る。本作が捉えているのは、都市と地方、電気とアコースティック、海辺と内陸の交流から生まれる混沌とした創造の渦。どんなグローバル音楽市場とも無縁のまま、ただ現場の欲求に突き動かされて生まれる音楽は、激烈で、奔放で、そして唯一無二。まさに生と死を祝うために鳴り響く、マダガスカルの現代的祝祭音楽と呼ぶにふさわしい、土の匂いがするロックと東部アフリカならではのナチュラルなトランスが交差したような音世界!ジャケットも最高でたまりません!!


1960〜70年代にリビアのベンガジで活動していたインディーレーベル〈Bourini Records(اسطوانات البوريني)〉を中心に、エジプトの周縁地域で育まれたもうひとつの大衆音楽の歴史を紹介するコンピレーションが〈Sublime Frequencies〉より到着。20世紀のエジプトでは、カイロを中心とする洗練された大衆音楽、アートソングが主流で、中産・上流層に親しまれていたが、カイロから遠く離れたアレクサンドリアやタンタ、さらにはリビア国境に至るまでの地方では、より素朴で荒々しい「シャアビ/アル=ムシーカ・アル=シャアビーヤ(庶民の音楽)」が育っていた。その中で重要な役割を果たしたのが、1968〜75年にかけて活動したベンガジ拠点のインディーレーベル〈Bourini Records〉で、このレーベルは、基本的にはエジプト人アーティストによる7インチ・シングルを40〜50作ほどリリースし、盲目のベドウィン歌手アブ・アバブやアレクサンドリアのシェイク・アミンらの短いが鮮烈なキャリアを支えた。本コンピレーションに収録された音源は、ラフで生々しい演奏や即興的な構成、シャアビ特有の打楽器やアコーディオン、竪琴などが収録されているのが特徴的で、主流音楽とはまったく異なる美学を示している。中には、動物のように唸るヴォーカルや、不協和音で終わる手拍子曲など、実験的なトラックも含まれる。この音楽は、洗練や理想を追求する都市部のポップスとは対照的に、「無名の人々の日常」をそのまま記録したもので、50年以上が経った今も、その迫力や切実さは色あせておらず、まるで目の前で演奏されているかのように響く。中央から見捨てられた周縁の声を拾い上げた伝説のレーベル〈Bourini Records〉の音楽は現在も強いリアリティをもっている。

