J.S. バッハ:無伴奏チェロ組曲全曲

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「私は整体指導に多くはクラシックのレコードを使用している。それは一つには、自分の技術に時として迷いがでるからでもある。私はかってカザルスのレコードを聴いて、これは本物だと思った。そして自分の技術もこれに負けないように磨こうと心がけた。 人間の体癖を修正したり、個人に適った体の使い方を指導している私と音楽とは関係なさそうだが、技術というもには、どんな技術にも共通しているものがある。カザルスは完成している。」野口晴哉 (1911-1976) ※野口整体の創始者
多くの復刻CDの中でも最高のリアリズム音質と評判高い名演中の名盤!!オーパス蔵最大のベストセラーが特別価格で登場!


はんぶる・ドットこらむ 山崎浩太郎
第28回 今月のヒストリカル 「古き鏡、新しき鏡」
今月はオーパス蔵による、カザルス独奏のバッハの無伴奏チェロ組曲集を取りあげる。

恐るべき音質、といってしまおう。
LPやCDの他者の覆刻でしか聴いたことがなかったわたしは、心底驚いた。こんなにも豊穣な、こんなにも生々しい音楽がこの録音の中に存在していたとは、まったく知らなかったからだ。
「永遠の名盤」などと絶賛されながら、いまひとつよくわからないレコード。それがわたしにとっての「カザルスの無伴奏チェロ」だった。音楽に霞みがかかっ ているというか、生気に欠けている印象が否めなかったからである。「バッハって、聴いて楽しむより奏いて楽しむもので、楽器をやらない人間には縁のないも のなのかな?」などと、分かったようなことを考えていたこともある。
しかし、間違っていた。
世の中、自分が間違っていたことに自分で気がつけたときくらい、嬉しいものはない。他人からそれを指摘されると腹が立つばかりで、誤謬に加えて自己の心の狭さまで痛感させられて、落ちこまざるを得ないのだが、自分で気がついたときには本当に嬉しい。
昨日ではなく今日を生きていることを、昨日と今日とは違うということを、実感できるから。そして、ということは明日も違うのかもしれないのだから、それを確かめるために明日も生きていたいと、思うから。
観察の対象が現代のものである必要はない。不変の、きまりきった、他人によって評価が確立されているものであるはずの、古典を対象にしていても、われわれの見方は揺れつづけ、落ちつくことがない。
だからは古典はわれわれの鏡となる。
鏡に映る自己は次第に年老い、やがて朽ちはてるだろうけれども、その日まで昨日とは違うことを考えつづけるなら、生きていた甲斐があるというものだろう。
ましてこのオーパス蔵のように、知っていたはずのレコードがまるで違う、新鮮な生気をたたえて登場してくるなら、生きている喜びは倍加する。くすんでいた鏡を磨いてもらったら、ぴかぴかと輝いて、自己の姿も鮮明に映しだされる、そんな気持ちである。
チェロだけの音、底鳴りするような響きだけに身をひたすことが、こんなにも気持ちがよいことだとは、知らなかった。
カザルス自身、LPの音質よりSP時代の音質の方が、音色の輝かしさは少なくても、より忠実だから好きだと、「カザルスとの対話」の中で述べている。眼前で楽器が鳴るような今回の復刻を聴けば、カザルスが言わんとすることがわかったような気がする。
ところで、今回のオーパス蔵のCDのライナーノートは一風変わっていて、バロックチェロ奏者の鈴木秀美が書いた、ライナーノート執筆お断りのメールが、そのまま転載されている。
前代未聞のライナーノートではないかと思うが、とても面白い。鈴木もまた、このカザルスの録音という鏡に、己を映しだしているからだ。わたしのようにただ 聴く者とちがって、鈴木は自身もチェリスト、自身も他者の鏡となるべき宿命を負う者だ。あれは古い鏡だからと、批判的にならざるを得ない(その素晴らしさ を認めつつも)新しい鏡の、真摯であるがゆえの苦しみが感じられる。
わたしにとっては、古いのも新しいのも、ともに良き鏡である。気楽なものだ。

CDは国内プレスとなります。



・J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲全曲
パブロ・カザルス(Vc)
録音:1936-39年HMV原盤
日本語解説:鈴木秀美



この商品は2015年07月28日(火)に登録されました。

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